坐骨神経痛は「坐骨」の痛み、つまりお尻のあたりの痛みだと思っている方が多いかもしれません。しかし、坐骨神経は腰から膝あたりまで伸びている とても長い神経です。ですから、足の痛みの原因となっていることが少なくありません。意外と知らないこの「坐骨神経痛」について、原因や症状、診断方法などについて解説します。
坐骨神経痛とは?
坐骨神経とは、腰から太ももを通って足先に伸びる神経の膝のあたりまでをいいます。この神経がどこかで障害を受けると、坐骨神経痛が起こります。
坐骨神経痛とは何か原因になる病気があって、その病気の1つの症状であって病名ではありません。また、坐骨神経痛は腰痛を伴うことも多いです。
坐骨神経に障害が起こる2つの原因
坐骨神経痛を訴えて病院を受診したとしても、原因がはっきり分からない場合が非常に多いです。坐骨神経痛を含む腰痛を訴える人のうち、約85%は原因が特定できないといいます。
では、残りの特定できる原因とは何でしょうか。原因が特定できる中で一番多いのは、腰部の神経圧迫が原因で起こる椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症です。この2つの病気では、特に坐骨神経痛を訴える患者さんが多いようです。
原因1:腰椎椎間板ヘルニア
坐骨神経痛の原因のほとんどは、腰椎間板ヘルニアだといわれます。
<症状>
腰やおしりから足にかけて、広く散らばるような痛みが発生します。その他、足のふくらはぎの外側にしびれが起こったり、足に力が入りにくくなったりします。ときに、排尿や排便の障害を起こすこともあります。
<メカニズム>
腰部の背骨は、椎体と呼ばれる骨の部分と、その骨と骨の間にクッションの役割をする椎間板があります。さらに、椎間板は繊維輪と髄核と呼ばれるものでできていますが、何らかの原因で繊維輪が断裂し、そこから髄核が出てきて、坐骨神経を圧迫して痛みやしびれが起こります。
<診断>
まずは下肢伸展挙上試験(膝を伸ばして足を挙げた時に痛みがあるかどうかを調べる試験)を行うほか、足の感覚や、力の入り方を調べます。加えて、レントゲン検査、MRI検査などで診断します。画像を見れば、ヘルニアかどうかがすぐに分かります。
原因2:腰部脊柱管狭窄症
<症状>
安静にしていると痛みはあまりありませんが、歩き出すとお尻から太ももや足の先にかけて痛みやしびれが現れます。そのため、長い距離を歩けなくなったり、しばらく休憩するとまた歩けたりということを繰り返します。このような歩行は間歇性跛行(かんけつせいはこう)と呼ばれ、脊柱管狭窄症に特徴的な症状です。
そのほか、足の筋力が低下したり、知覚障害や膀胱の障害(トイレが近くなる、回数が多くなる、尿が残った感じがあるなど)が起こったりする場合もあります。
<メカニズム>
神経が通る道の腰椎の脊柱管が、腰椎の変形などによって狭くなり、神経を圧迫して症状が発生します。変形の原因としては、加齢があげられます。年を取ると背骨が変形したり、椎間板が変形したりするため、このような狭窄が起こりるのです。腰椎椎間板ヘルニアに比べ、中高年に多いのが特徴です。
<診断>
MRI検査で診断できることが多いです。MRI検査ではっきり診断ができない場合や手術が決まって詳細に検査する場合には、腰椎に針をさして造影剤を入れて脊髄造影という検査を行います。
まとめ
坐骨神経痛は坐骨神経に沿った痛みであり、神経が障害されていることが原因となります。
原因となる代表的な病気は、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症です。また、画像検査を行っても神経障害の原因が特定されないことが多いのですが、多くは短期間で改善します。
しかし、中には原因が特定されないまま、長期間症状を繰り返す患者さんもいます。足が痛くてしびれて歩行もままならない坐骨神経痛ですが、医療機関で正しい診断を受け、その原因や症状にあった治療を受けることが重要です。