膝が痛い。若いときにはほとんど感じなかったのに、40歳、50歳あたりからはっきりと膝の痛みを感じ始めるという人が増えてきます。
調査(※)によれば、膝の痛みを感じ始める年齢でもっとも多いのが50代(28.9%)、次いで40代(25%※)です。40~50代といえば、働き盛り。
では、なぜ40代、50代から膝が痛みだすのでしょう? そこで、東京医科歯科大学運動器外科学教授(2017年より国立病院機構 災害医療センターの院長)の宗田大先生に伺いました。
(※科研製薬株式会社・生化学工業株式会社「ひざの痛みと対処法に関するアンケ―トより、有効回答数800」
変形性膝関節症とは
「40代、50代からの膝の痛みの多くは、変形性膝関節症です。変形性膝関節症とは、膝の関節内でクッションの役割をする関節軟骨がすり減り、骨と骨が摩擦を起こすようになって膝の関節が変形する病気です。その症状は、最初は①強ばるなどの違和感 ②階段を上り降りする際や立ち上がったときに出る痛む ③炎症によって腫れて痛むと言った具合に、次第に強い症状が出てきます。私が診ている病院でも、患者さんのほとんどが膝に痛みが出てから病院に来ます。しかし、この病気がやっかいなのは、痛みの強さと病気の進行度合いが必ずしも比例していないことなのです」
レントゲンの画像では、膝関節の変形がかなり進んでいるのに、あまり痛みを感じない人もいれば、鋭い痛みを感じる人もいるそうです。
「そこで、最初に、最も重要なことをお話ししておくと、少しでも膝に違和感を感じたら、整形外科に受診し、治療を始めることです。擦り減った関節軟骨はもとには戻りません。しかし、今以上、擦り減らないようにすることは可能だからなのです。また、膝の痛みの強さや変形の度合いに関係なく、また、変形性膝関節症か否かにも関係なく、膝の曲げ伸ばし運動を意識してやって欲しいということです。関節は、動かさなくなればどんどん硬くなって、機能低下を起こします。そして、やがて固まり、動きにくくなってしまうからです」
とくに働き盛りの中高年で、デスクワークの人は長時間座りっぱなしです。ですから、膝の痛みがある・ないに関係なく、時間をみつけて屈伸運動を心がけることが大事だということです。
内側の膝が変形するタイプの人が多い
さて、本題の変形性膝関節症ですが、そのタイプには2つあり、膝関節の外側がすり減る外側型、内側の関節がすり減る内側型です。その特徴は大きく異なります。
1、外側型は、ケガや病気などの二次性の要因
2、内側型は、加齢や肥満、O脚など一次性の要因
が多いのです。
ちなみに、膝関節にかかる体重の負荷は、内側7、外側3の割合ですので、負担の大きい内側型の変形性膝関節症の方、つまり加齢や肥満、O脚の要因の方が多いのです。
そもそも膝は、平の道を歩くだけで体重の3倍の負荷がかかり、立ったりしゃがんだりすれば体重の約7~8倍もかかります。このように、日常生活だけでも繰り返し酷使しているので、加齢によって繰り返し負荷がかかった膝軟骨が擦り減ってしまうのは自然現象ともいえ、仕方ないことでもあります。
「ただし、ご自身でできる有効な対処法としては、膝に負荷を減らすために体重を増やさない、О脚を治す、正しい姿勢で歩く、正しい靴を選ぶなどいろいろありますが、最初に申し上げたように、どんな方も、膝の曲げ伸ばしをすることが一番大事です。これは、膝周りの筋力強化をするためではありません。むしろ変形性膝関節症の方は、ハードな筋力トレーニングやランニング、ウォーキングで無理をすると、膝軟骨は余計に擦り減ってしまいます。ですから、ストレッチをする程度のゆっくりとした曲げ伸ばし運動が一番良いのです。これを続ければ、膝の機能は一生ダメになることはありませんから、ぜひ、毎日、膝の曲げ伸ばし運動を続けてみてください」